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 専門医の在り方に関する検討会の報告書(素案)に対する意見書
平成25年2月28日
 
専門医の在り方に関する検討会
 構成員 各位
 
一般社団法人日本外科学会
理事長 國土典宏
一般社団法人日本消化器外科学会
理事長 森正樹
特定非営利活動法人日本小児外科学会
理事長 田口智章
特定非営利活動法人日本胸部外科学会
理事長 坂田隆造
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
理事長 上田裕一
特定非営利活動法人日本血管外科学会
理事長 宮田哲郎
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
理事長 近藤丘
3学会構成心臓血管外科専門医認定機構
代表幹事 橋本和弘
呼吸器外科専門医合同委員会
委員長 千原幸司
 
報告書(素案)に対する意見書
 
 去る2月6日開催の「第16回専門医の在り方に関する検討会」で提示された報告書(素案)を拝見いたしました。詳細はすべて新設される第三者機関で検討される旨を了解いたしましたが、以下の点は本質にかかわりますので、制度の基盤を担うべき外科系からあらかじめ指摘申し上げます。
 
◯第三者機関の機能と位置づけについて:
「はじめに」の5項目目における「医師の偏在是正を図る事を目的として」という文言と、3-(3)の3項目目における「専門医の質や分布等を把握するため、(中略)そのためのデータベースの構築が必要である」という文言、さらに3-(4)の2項目目の「中立的第三者機関は(中略)医師養成の仕組みをコントロールする事を使命とし」、また、5-(2)における「養成数の設定においては、専門医及び専攻医の分布状況等に関するデータベースなどを活用しつつ」という文言すべてを読み合わせると、第三者機関は専門医の育成や資質の向上などの他に、この制度で得たデータベースを基にして専門医の養成数のコントロール、地域への配置のコントロールまで行うことを目的としているものであることが読み取れる。第三者機関にこのような専門医の認定以外の強大な権限と機能を持たせることには断固反対である。
 
◯「1.検討にあたっての視点」について:
患者(国民)の視点を加えることはもちろん重要であるが、専門医になる医師からの視点に欠けており、新たな専門医制度が専門医にとってどのようなメリット/デメリットがあるのか、についての説明がほとんどない。専門医を目指す医師にとって広告可能というメリットだけでは不充分で、例えばドクターズ・フィーのような実質的なメリットへ向けての見通しを記述していただきたい。本報告書で頻用されているプロフェッショナルオートノミーという言葉は、職能集団(医療者)側の利益も守られた上での職業規範という概念のはずである。
本来目的としてきた専門医の教育と育成の標準化や資質の向上といった観点での制度設計に、それとは本質的に関係のない医師の偏在是正や総合診療医制度といった異なる概念を混在させることで、議論そのものが国民にとってわかりやすいものとなっていない。医師偏在の是正や総合診療医の必要性を否定するものではないが、それぞれ異なった場で議論をすべき課題と考える。
 
◯「3.専門医の質の一層の向上について」について:
第三者機関がデータベースを構築する場合は、一般社団法人National Clinical Database(以下、NCD)などの既存の有効なデータベースを上手に利活用すべきである。
例えば、心臓血管外科専門医認定機構は日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会、日本胸部外科学会の3学会が合同で、第三者的組織として専門医の認定や更新を行っており、素案で提案された第三者的認定の雛形ともいえるものである。このように外科系では関連する学会が協働で技能評価や、臨床実績の確認、また更新の認定作業などを行ってきた実績がある。しかし、すべての専門医の認定を新設される第三者機関で行うことは、特に外科系サブスペシャルティ専門医のような専門性の高い、さらに技量評価を要する点では困難が予想される。現在の学会の制度を継承して、この制度を第三者的に評価に関与するという枠組みも考慮すべきである。
第三者機関の外部評価委員会は、強大な意志決定権や拒否権を持つ可能性がある。ここに医療者でない患者代表や有識者を参加させることに反対する。プロフェッショナルオートノミーと矛盾する。国民や有識者の意見はアドバイザリーボードのような別委員会にするべきである。
第三者機関には学会側の意見を集約し機関の運営方針に反映させるシステム(学会代表者会議など)を設けるべきである。
そもそもの医療制度や、医師を取り巻く環境(コメディカルスタッフの充実など)が異なる諸外国と比較しながら適正な専門医数を検討しても意味がない。
専門医の養成数や配置を決めることの是非は重要な問題であり、諸外国との比較ではなく、NCDのデータなどを基に、学会と協議しながら慎重に検討すべきである。当然ながら強制的な専門医の配置には断固反対である。
二段階制の仕組みだけに留めるべきではなく、肝胆膵外科や大腸肛門病、食道外科などの三階部分をどのように取り扱うかについて見通しを明らかにしてもらいたい。
この第三者機関は、どのような資金で運用面、人材の経費が賄われるのであろうか?公的資金の見通しとしては、本年度概算要求にあるデータベース関連の約5,000万円程度に留まっている。参加学会の負担はどれくらいになるのか、予算面の見通しを明らかにしてもらいたい。
 
◯「4.総合診療専門医について」について:
総合診療専門医の養成プログラムには必ず外科の内容も盛り込むべきである。
 
◯「5.地域医療の安定的確保について:
繰り返しとなるが、専門医の養成数や配置を決めることの是非は重要な問題である。専門医の数と分布は、創設される第三者機関という巨大な組織(全専門医の認定業務に関わる)が一元的にコントロールすることになる。「研修病院群の設定や、専門医の養成プログラムの地域への配置の在り方を工夫する」とあるが、前述のNCDデータなどを基に、学会と協議しながら慎重に研修施設の基準を検討すべきであり、改めて強制的な専門医の配置には断固反対である。
第三者機関が専門医不足の地域の医療機関を養成施設に指定し、偏在解消を図ることを想定しているのであれば、高度の専門性が要求される消化器外科専門医、心臓血管外科専門医、呼吸器外科医、小児外科医などは画一的な偏在解消には当てはまらないと考える。これはプライマリケアを担当する「総合診療専門医」について言及されたものと考えられるので、明解とすることを求めたい。
研修施設については大学病院や地域の中核病院などの基幹病院と地域の協力病院等が医師不足地域を含めた病院群を構成する、とあるが、これはまさに現在の初期臨床研修制度の再現であり、地方大学病院ひいては地方の医師不足を招いた元凶のシステムを拡大再生産しようとするものである。形式的な研修病院群を構成できても初期研修医の大病院・都市集中という結果に終わった事実を直視すべきである。逆に、専門医制度でのより強制的な地域医師不足解消策は専門医の質の均一性を著しく損なうものとなる。
 
 
以 上