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 厚生労働大臣宛要望書(4月17日提出)
平成21年4月1日
 
厚生労働大臣
 舛添 要一殿
 
社団法人日本外科学会
理事長 里 見  進
 
要  望  書
 
 2009年4月1日、福岡市で開催された社団法人日本外科学会通常総会において、近年の外科志望者の減少で招来することが予測される外科医療の崩壊を防ぐために、国のご支援をお願いすることを決議いたしましたので、ここに要望書として提出申し上げます。
 外科志望者の減少は、世界的な傾向と言われています。わが国でも同様であり、卒業年次ごとの日本外科学会への入会者数は1990年代の初頭は約1,500名であったものが、2000年以降は1,000名を切る状況となり、06年には863名まで減少いたしました。つまり、90年代の初めに比べ、最近では約60%の数の外科医しか誕生していないことを意味しています。現在の外科医療は、主として80年後半~90年前半の時期に外科医となった医師が中心となって行われていますが、今から10年後には、志望者数が少なくなってきた2000年代に外科を選択した医師が中心となって、これを支えていくことになります。このような外科医療の担い手の減少が外科の労働環境をさらに劣悪化することが予見され、このことは、現在深刻な医師不足を生じている産科と共通した傾向にあることから、今後、外科医師の不足が、現在の産科医不足と同様な社会的問題となりうることを懸念しています。
 一方、外科医療は近年ますます高度化し、また、高齢化社会の到来で、高齢者に対する手術機会が多くなり、周術期管理も複雑化しています。そして、いま求められている安心医療の実践のためには、良好な労働環境や積極的に医療を行うことのできる環境の確保が欠かせません。ところが、07年に本学会会員を対象として行った労働環境に関する実態調査では、約60%の外科医は当直明けの翌日にも手術を担当していることを始めとして、過酷な労働環境の中で業務を遂行していることが明らかになっています。また、やむを得ず厳しい労働環境の中で診療を行ったとしても、通常の診療に比較してインセンティブがほとんど与えられていないのが現状です。さらに、近年、特に注目されるようになった医療紛争についても、外科は産婦人科についで紛争リスクが高いという指摘があります。生命維持にとって極めて重要な諸臓器に手術操作を加えた結果、思いがけず悪い結果が生じたことが心ならずも紛争につながってしまうことは、外科医にとって痛恨の思いであるだけでなく、いわゆる萎縮医療と称されるような診療意欲の減退を招きかねません。これらの労働環境、経済環境、紛争リスク等が要因となり、外科離れに拍車をかけていると考えられる現在の状況を、大変残念に思っているところです。
 外科志望者減少問題に対しては、日本外科学会では他の外科系学会と連携し、機会あるごとに学術集会でのテーマとして取り上げ、一般有識者のご意見も傾聴しつつ、議論を重ねてきました。また、魅力ある専門医制度の構築、外科医の労働環境の改善、女性外科医の支援、紛争リスクの逓減などの取り組みなどにも力を入れてきました。今後も、日本外科学会として、医学生や研修医に外科学の魅力や重要性を啓発するとともに、質の高い外科専門医を養成すべく努力してまいります。
 しかし、わが国の将来の外科医療の提供体制に関する、このような大きな課題を学会だけで対応していくことには、おのずから限界を感じております。今後も安全で質の高い医療を国民に提供していくためには、国の政策としての強力な対応も不可欠と考えます。
 私ども日本外科学会も、安心、安全な外科医療の確保のために、あらゆる努力を惜しまない気持ちで取り組んで参りますので、国におかれましても何卒ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。