
長崎で開催された第108回定期学術集会の理事会で、理事長に選任された東北大学先進外科の里見です。これからの2カ年間、理事、監事、会頭、次期会頭の先生方と共に外科学会の発展のために全力で取り組みたいと考えております。
これまで本学会は学術集会を主催する会長の下に一年交代で運営され、主として学術的な進歩を通して社会に貢献すると共に、関連する外科系諸学会と連携しながら様々な問題に対処してきました。しかしながら、昨今の医療をめぐる社会状況の変化はめまぐるしく、これらのことに迅速・的確に対応するには、医療としての外科の役割を正面に見据え、長期的視野で継続性を持って取り組む必要性がでてきました。本学会は1898年の創設以来110年の歴史を持ちますが、昨年の規則改正を受けて、本年度より理事長制を初めて導入することになりました。また、今回からは理事も2年に一度、全員が同時期に選出される仕組みになりましたので、少なくともこの2ヵ年は同一メンバーで腰を据えて取り組む体制が整ったことになります。
麻酔科や小児科、産婦人科などの医師不足の問題がマスメディアで注目を集めていますが、本当は外科医の減少のほうがより深刻で、社会へ与える影響も大であることはあまり認識されておりません。わが国の医療の抱える問題は、外科志望者の減少に端的に表れているといっても過言ではないように思えます。外科志望者を増やすためには、われわれ自身が学術・研究面での進歩に挑戦し、外科学の持つ治療学としての斬新さや魅力を見せることで若い医師を鼓舞し、夢を与えることが大切であります。それと同時に若き医師には外科医としての将来の目標を明確に提示し、そこに至るまでの教育の道筋を示すことも必要なことです。その意味では外科専門医制度については今後とも継続して検討し、より優れた制度として整えなければなりません。幸い外科関連の学会の結束は強く、長年の討議を経て、外科専門医を一階にして、その上にサブスペシャルティの専門医を配置する二階建ての専門医制度が確立しております。今後は外科医の技能を客観的に評価して質の保証を行うことや、適正な専門医数の算定と配置、そしてそれらの根拠となりうる正確な手術症例数の把握と分析等を行い、最終的には外科技能を診療報酬へ反映させるような仕組みにしなければなりません。
一方、外科学会が先に行ったアンケートの結果からは、外科医の労働環境の悪いことが指摘されています。業務の分業・分担をするナースプラティショナーやフィヒジシャンアシスタント制度の設立や、医業クラークの充実、増加する女性医師のための勤務環境改善のための委員会活動を充実させ、外科医がプロとしての専門性を発揮できる環境の整備に努めていかねばならないと思います。また、本学会はこれまで何回か声明を発表し、医療事故の調査を独立して行う第三者機関の設立を主張してきました。今後とも、日本内科学会が中心になって行っているモデル事業には積極的に関わり、医療事故の原因究明とその対策を行なう当事者としての責任を担いたいと考えております。その他、医療倫理や臨床研究の倫理指針、利益相反、日本医学会や日本専門医制度評価・認定機構との調整、関連学会との連絡等々、理事の皆様には多くの役割を担っていただくことになると思います。また、会頭や次期会頭のお二人には定期学術集会の開催に全力を注いでいただくと共に、海外との学術交流にもご尽力をいただくことにしております。役割を分担することで本学会の運営が円滑になり、有効な対策が打ち出されることを期待しております。
医療崩壊が声高に叫ばれている今、医療を守る最後の砦となれるように、基幹学会としての役割を果たし、社会に情報を発信する学会へと変っていきたいと考えておりますので、会員諸氏の皆様にはご協力のほど宜しくお願い申し上げます。 |